天上天下唯我ドキュソん 殿堂入りおすすめネタ



の寒さが一段と強まり,朝方に息を吐くと白い煙がもくもくと出て,「ゴジラだ!ガオー!!」などと 言って遊んでいる子をまれに見かけます.それを見て私も,息を吐くと白い吐息が心地よく季節を実感させてくれます.

 さて,今回はそんなさわやかなエピソードをご紹介致しましょう.(・_・、)






 夜の12時くらいだったでしょうか?

 そろそろ帰るか・・・ということになり,帰路につく途中,夕食にハンバーグでも食べようと思い立ち, 相棒である Virago 250 と共にいつものファミレスに向かったのです.

 バイクを駐輪場に止めて中に入ろうかな?と思うと, 以前までは24時間営業だったそのお店は,何故か閉店準備をしていました.

そして,看板を見ると,既に閉店時間・・

 いつも徹の夜を共に過ごしてきたお店だけに悲しいものがありましたが, そのお店は根性を無くし,深夜のボランティア営業はしないという営業方針に変わったようでした.( そりゃあたりまえだ.)

 なんか,いつも6時間とか粘っていたので,ひょっとして私の居座りがこのお店の経営を圧迫した?などと 少し責任を感じたりもしましたが,座って寝ている客も沢山いたZO!と自分にいいわけをして許してもらいました.

 というわけで,やむなく,少し遠いファミレスの代名詞ガストに乗り込むことにしました.

 相変わらず,バイクを再び押し掛けで始動し,車道に出ました.

 どうも,エンジンの調子が悪い・・・

 寒いから当然か・・

 バイクは寒いとエンジン内の摩擦や爆発のしやすさ,スパークの電圧などが下がって調子が悪くなります.

 「おいおい.相棒君.がんばってくれYO!!」


 長い下り坂を下って,ようやく目的のガストに到着しました.そこで380円ガストハンバーグをたいらげて・・

 「プファ〜.うめえ! やっぱり腹減ってるとうめーなー.」

 と少し騒いでから,もう寝ようと思ったので,家に帰ることにしました.




 バイクに戻って,手袋をし,メットをかぶって,MP3プレーヤーをON!!
 「超超超超いい感じッ!ウォウオッウォウオッウォウオイェイウォ!」  っとサウンドが鳴り響き

 高まっていく心のボルテージ!

 「さーて.帰るぜ!」

 押し掛け5m.

 エンジンカカリマセン.

 まあ,良くあることです.

 気を取り直して 押し掛け5m.

 エンジンカカリマセン.

 1速に入れて,クラッチを切り,バイクの勢いを付けたら,クラッチをつなぐと同時に体重を掛けて エンジンを回すというのが通常の押し掛けですが,こういうかかりにくい時は,2速に入れて クラッチを切り,勢いを付けて,クラッチをつないで押しまくる!という 第2の手段もあります.
 ということで,その方法に移行しました.

 「さーて.帰るぜ!」






 5m




 ガッポガッポガッポガッポガッポガッポ(エンジンが私の押すエネルギーで回る音)







 20m




 ガッポガッポガッポガッポガッポガッポ(エンジンが私の押すエネルギーで回る音)







 50m




 ガッポガッポガッポガッポガッポガッポ プスン(エンジンが私の押すエネルギーで回る音)


 エンジンカカリマセン.



 小生:「ハァハァ どうしたんだ? 相棒!? ハァハァ 機嫌が悪いじゃないか.お兄さんに話してご覧なさい.」



 エンジンコトバワカリマセン.



 デェムッ!!



  170kgにもなるバイクの車体を  クラッチつないだままエンジンのピストンを  2つも動かして押しまくるのは,さすがに疲れます.



 こんなに押しまくっても,エンジンがかからないことは希だ.そういう時は大概, 電気系統のスイッチがKillになっていたり,ガソリンそのものが切れて いたり,キーが回っていなかったりするので,休憩もかねて点検すことにしました.


 おかしいなぁ・・ 異常は見られない・・・ やはり,“押し”が甘い だけなのか?


 そうだ.気合いが足りないだけなんだよ!
 気・合・い・が  



ということでもう少しトライしてみることにする.







 55m




 ガッポガッポガッポガッポガッポガッポ(エンジンが私の押すエネルギーで回る音)







 70m




 ガッポガッポガッポガッポガッポガッポ(エンジンが私の押すエネルギーで回る音)







 100m




 ガッポガッポガッポガッポガッポガッポ プスン(エンジンが私の押すエネルギーで回る音)


 エンジンカカリマセン.



 デェムッ!!



 もう少しがんばればかかるかも・・・ なんてことを何回も繰り返しているうちにとうとう,1kmくらい 進んできてしまった・・

 その頃にはもう,疲労困憊・・

 先ほど食べたハンバーグのエネルギーは半分くらい消費されていたことでしょう.

 「こんなことならハンバーグなんか食べに来るんじゃなかった・・(・_・、)」(とかなり弱気になってみる.)



 しかし,物語はまだ始まってもいなかった・・・




いうわけで既に1kmほど進んできてしまったわけですが,安らぎの地まで,帰り着くには あと5kmはある.

しかも!


その経路上には傾斜8%くらいの坂が延々と続く流浪人泣かせの難所が 待ち受けていた.

 何とかここで踏ん張って,エンジンを回復させなくては,相棒 をここに放置して行かざるを得ない状況となる!!


 故障の原因は「電気系統」であると察しは付いていた.

 寒い深夜の外気に曝され,バッテリーの起電力は下がる.それに加え,最近メンテナンスしていなかったので エンジンからのタイミングスパイクを検出する電気コードとその固定ねじ周辺で漏油・暴水による漏電が起こっている. そのため,エンジン内のスパークプラグから十分なスパークが出ずに,エンジンが点火しないのだ.

 この不具合の観測される割合があまりに高いので,エンジンと駆動スプロケット(動力をチェーンに伝えるところ)の横を取り外せるだけの工具は 常に持ち歩いている.


 こうして,真夜中の路上でバイクのエンジン付近を分解し,掃除するという作業が開始される羽目となった・・・・



 だいたい深夜の2時過ぎくらいであったので,もう真っ暗だ.


 自動販売機の前にバイクを停車し,その仄暗い明かりで解体を進める.そして,人が付近を通過するたびに カモフラージュのためジュースを買う仕草をして不審者がられないように注意を払いながら(深夜にもかかわらずたまに人が通行します.)  両手を油で真っ黒にして問題の箇所の汚れを除去します.



小生:
「たまには手入れして欲しかったんだよな? 相棒?! ( ゜∀゜)」

小生:
「今,奇麗にしてやったからな! 元気出せよ.(´▽`)」
   ・
   ・
   ・
   ・
助手:
「先生!! 麻酔は全身ですか?局部ですか?」

医師:
「そんなことをやっている場合ではない! ことは一刻を争っているのだ!!」

助手:
「オペの準備整いました!!」

医師:
「うむ. メス.」

助手:
「はい! スパナのことですね?!」

医師:
「よし. 心臓から肺にかけての神経節周りの血液を吸飲. 早くしろ!!」

助手:
「はい! ボロ雑巾で油を拭き取ればいいのですね?!」

医師:
「よし. 何をやっている!! 汗ッ 汗だ!! 早くしろ!!」



 っと・・・・このように30分強くらい手術を行っていたであろうか・・・

医師:
「よし.手術は成功だ.ご家族の方を喜ばせるためにすぐに面会の準備をしなさい.」



 そのように,医者がおっしゃるので,私はうれしくなり,

 エンジンの始動音を聞くために,早速バイクを押しまくりました.






 1005m




 ガッポガッポガッポガッポガッポガッポ(エンジンが私の押すエネルギーで回る音)







 1020m




 ガッポガッポガッポガッポガッポガッポ(エンジンが私の押すエネルギーで回る音)







 1050m




 ガッポガッポガッポガッポガッポガッポ プスン(エンジンが私の押すエネルギーで回る音)


 エンジンカカリマセン.



 ッノバビッチ!!



 その頃には,快感が怒りに変わり始めていました.(今までは,相棒とのスキンシップということで楽しんでいましたが・・という意味) ハァハァ.ハァハァ.




やるべきことはわかっていた・・・・

 充電バッテリーが萎えているのだから,充電するためにダイナモを回し続ければいい! ダイナモはエンジンに付いているのだから エンジンを回し続ければいい.そうすれば何時間かかるかはわからないが充電されて,エンジンは動き出す.

 そのように考えた.



 私は近場の駐車上へとバイクを押したまま突進し,半径15mくらいの円を描きながら グルグルと体力の限り押しまくるという無謀なチャレンジを始めた.

 それは,目的達成のための必要な手段だと信じていたからであった・・・





 ゼイゼイ言いながらがんばっていると,しばらくしてあることに気づいた.





 気づいてしまった・・・ (・_・、)







 ヘッドライトがハイビームになっていたのだ・・・・
   ↓
 それは,ヘッドライトが通常時の2倍の電力を使用しているということを表し・・・・
   ↓
 充電される電力 < 消費される電力(圧倒的に多い)

という式が頭の中に明確に想起された.




 そしてヘッドライトをのぞき込んでみると,明かりが付いているのか付いていないのか わからない程度に微妙な光が見え,
そして,フッと消えた・・・


使い果たした!!
とうとう全てのエネルギーを使い果たしてしもうた!!

(バイクのバッテリーも,私の体力も,そして精神力も・・・・)


 バイクのヘッドライトと共に私の心の活力の灯火(ともしび)も消えてしまった.

 時刻は深夜3時を回りかけていた.
 なのに,汗だくになりながら,ハァハァと白い息を吐き,もうもうと頭から湯気を 立ち上らせている男がそこには約1名いた・・・ 人知れず・・・

 
 しかも,次の日は確実に全身筋肉痛ということが明白なくらい,疲労困憊していた.

 最短の駅までたぶん2kmくらい.安住の地まではあと 4kmくらいであった.



 しかし,この時点でも物語はまだ始まったばかりの序章でしかなかった・・・








も・は・や・これまで!

 体力的にも精神的にもバッテリーの内容物も使い果たしてしまった か弱き男は, そのように口走ると,その場に相棒のビラーゴ君を放置して帰る という選択を行うことにしました.

 時刻は既に,深夜3時過ぎ!

 気を取り直してハンバーグを食べ直すなんて言っている場合ではありません!( 近くのお店は既にみんな閉まっています.)

 私は工具を取りだし,問題のバッテリーを取り外しました.

 そして,メモ帳に「このバイクは故障中です.近日中に回収しに参りますのでどうかレッカー移動しないで下さい. 責任者 電話 090-XXXX-XXXX」

 そのように書いてバイクの最も目立つところに洗濯ばさみで固定しました.その周辺で最も迷惑のかからなさそうなところに相棒を停めると,







「必ず助けに来るからな!!」そう言って


重量約10kgのバッテリーを担ぎ夜道を歩くこととしたのです.

 家に帰れば,バイカーの必需品 「12V用充電器」があるので, それで充電するつもりでした.
 安住の地までは4kmほど.約1時間の距離です. バイクを押してはとても登り切ることは 出来ないであろう心臓破りの坂(246)を上りながら,バッテリーはずしりと 現実を教えてくれます.

 「ふへぇ〜.安住の地までは約1時間だから,着く頃には4時か〜.まったく,とんでもない旅になったよ・・・・」

 そう思いながらも,この時間を無駄にしてはいけないと思い,歩きながらバッテリーをバーベル代わりに上下運動.30回やったら今度は別の腕で.  さっきはしこたま足を鍛えたので今度は腕に圧力を掛けます.そのまま,上半身の様々な部位を鍛えつつ,246を通り過ぎていく車達の ナンバーを目で追い,動体視力の鍛錬も怠りません.


 達人を目指す自称「若武者」としてはどんなに苦難な状況でも修行の一環ととらえなければならないのです!(・_・、)

 ようやく,安住の地へと到着しました.



 長く・・険しい道のりだった・・・・



 それなりの充実感と安堵感に見舞われ,

辿り着いた部屋の鍵を開けようとする.







 ハッ?!



 ハァ??



 破ァッ!!



っと.どんなに気合いを入れてみても,
体中のポケットというポケットを探索しても,



鍵が見つからぬ!のです.(・_・、)

 バイクを押している時には確実にあった鍵が・・見つからぬのです.

 考えられる可能性は2つ.

 1.バイクに鍵が刺さりっぱなし.(オーイオイオイ泣きじゃくる音

 2.ここまでの道のりで筋トレしながら体を振り回している最中に落とした.

 どちらにしても,今までの道のりを引き返さないわけには参りませんでした・・・・

 そこで私は何か(カルマ)を感じずにはおれませんでした.

 夜空を見上げて,自分の小ささを感じずに北極星を見つめることも出来ませんでした.それからです.自分を「小生」
と呼ぶようになったのは・・・



「その勝負! 受けて立とう!!!!!!」

 そう言い放つと,私は全力疾走で,今来た道を革靴のまま逆戻りし,
ハアハア

と白い吐息を荒立てながら「最近たぶん,アリをいっぱい踏んでしまったんだ.気付かないうちに・・・ごめんねアリさん・・」などと祈っていた.(たまに足下に鍵が落ちていないか確認しながら・・・)

1時間の道のりも,20分ちょいで戻って,

 再びバイクのところに赴くと,




私の保有する鍵達全てが,しっかりと,バイクに刺さりっぱなしになっておりました.


「テェメェエェ・・・舐めやがって・・・」(;-д-)
 (テメエとはたぶん自分のことだったのでしょう・・・・・)


 鍵が見つかって良かったものの,現在早朝4時半,この怒り,何処にぶつければいいのでしょう?









 というわけで,こういう形で,この怒りをぶつけることとしました.








 このバイクを押して,今来た道を帰ってやる!!
 心臓破りの坂だかなんだか知らんが絶対制覇してやる!




 哀れな男はそのように心に決め,心のろうそく(極太)に容赦なく火を灯したのです.



 その後,男は,約1kmに及ぶ上り坂を両腕両足をプルプルさせながら,何度もろうそくの火を消されそうになりつつも, 昇っていったとのことです・・・・









 闇夜に浮かぶ劇汗の吐息! これぞ真の白い息だ!
 そう勝手に悟りを開き,今日もまた,初心を貫徹する男の心にヤキを入れました・・・・

 安全地帯にたどり着いたのは朝6時過ぎ・・余裕で明るくなった世界で,男の目には北極星は既に見えず, ただ死兆星(しちょうせい) だけが光っていたとの話です・・・・  2時間だけ寝て,日常に返り咲き,また少しだけ「達人」に近づくことの出来た今日この頃.

 それでもまだまだ,道は険しい・・・・














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