天上天下唯我ドキュソん 殿堂入りおすすめネタ



れは,いつぞやの秋とも冬とも言えないような時期でした・・・

 まだ,秋の風情が残りつつ,冬の香りも色濃い夕暮れ.
 いつものように相棒(YAMAHA 250cc アメリカンタイプ Virago)にまたがって,帰路の交差点で信号待ちをしながら,


「はー.なんか,今年はあまり秋を感じる前に冬が来てしまったという感じがするなー.」

「秋といえば,紅葉の秋・運動の秋・読書の秋・食欲の秋・・・」

「秋+食欲といえば・・」

「やはり,焼き芋か・・」

「そういえば・・焼き芋食べてないなー」

 そんなどうでもいいことを,むなしく一人で考えていると,どこからともなく,秋の風物のあの声が聞こえてきたのです.











「い〜しや〜〜きいも〜〜〜〜お〜〜
 や〜きたて〜〜〜え〜〜ぇ〜や〜きいも〜〜〜〜」









「い〜しや〜〜きいも〜〜〜〜お〜〜
 や〜きたて〜〜〜え〜〜ぇ〜や〜きいも〜〜〜〜」









 声はにわかに大きくなって聞こえてきました.

 さすがこのご時世.私がこのように考えるということは,世間様も左様に考える方々が多いと見えて,その需要に 答え,供給するべくしたたかな方々がイモを売ってらっしゃるようだ.

 どれどれ,これも何かの縁だ.ちょっと寄り道でもしていこうか・・

 そう思い,石焼きイモの声のする方にバイクを進め,そのイモ屋を捜すことにしました.

 こういう石焼きイモ屋さんはたいがい,軽トラックかなんかの荷台を改造して石焼きイモ製造マシーンを搭載し, 時速10kmくらいでトコトコ走りながら,拡声器を使って宣伝・客寄せして, 地元の主婦を誘い出すというのが手口なので声のする方に行けばすぐに 発見できるものである.



 地元の ある住宅街. 焼き芋を売る声はそちらの方から聞こえてくる.音量から考えて1km以内なのは間違いない.






 しかし・・







 音の鳴る方向へ進んでも,いっこうに石焼きイモ屋が見あたらないのである.


 この住宅街を石焼きイモ屋が通過していることは間違いなさそうで,私以外の人も,石焼きイモ屋が 近くに来ているということを察して,玄関から軒先に出てきてキョロキョロしている.

 近くに来たら買おうと思っているに違いない.

 しかし,肝心の焼き芋屋が見つからないのである.

 2分ほど捜したが見つからず,イモを売る声も聞こえたり聞こえなかったりして,
 もう,めんどくさいのであきらめて帰ることにした.
(おいおい! 焼き芋はその程度の欲求だったのかよ!)


 だが,その時,






「い〜しや〜〜きいも〜〜〜〜お〜〜
 や〜きたて〜〜〜え〜〜ぇ〜や〜きいも〜〜〜〜」







「い〜しや〜〜きいも〜〜〜〜お〜〜
 や〜きたて〜〜〜え〜〜ぇ〜や〜きいも〜〜〜〜」





「い〜しや〜〜きいも〜〜〜〜お〜〜
 や〜きたて〜〜〜え〜〜ぇ〜や〜きいも〜〜〜〜」



その声はにわかに大きくなって近づいてきたのである!!










 そして,時速70km/hくらいの超高速で 「焼き芋を搭載した軽トラック」がこの狭い住宅街の道路を駆け抜けていったのだ.

 ドップラー効果たっぷりの効果音を引きずりながらの爆走! (ドップラー効果:救急車などが近づいてくる場合,そのサイレンの音が高い音程に聞こえるが,通り過ぎた瞬間から以前よりも低い音程に聞こえるという物理現象)










焼き芋全然
売る気
なし!!


● いったい何のために,拡声器で宣伝しながら走っているのか?

● あんな速度で走ったら,荷台の焼き芋製造マシーンが壊れるんじゃないのか?

● いったい何に追われているのか?

● 新手の暴走族?

● 今流行の珍走族?





 止めどなく,疑問がわいてくるが,その爆走石焼きイモ屋はそのまま消えてしまったので, 真相を確かめるすべもなく,イモはあきらめて家に帰った.



 帰路の途中で信号待ちしながら,この出来事を思いだし,何となく「カチカチ山」とダブらせて苦笑いする・・そんな秋の夕暮れでした・・・・・.


 (カチカチ山:性悪タヌキがおばあさんにひどいことをしたために,ウサギがタヌキをカチカチ山に誘い出し,背中に火を つけて,タヌキを丸焼きにするといった日本の童話.かなり残酷な話であるのがみそ)














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