大 概の人は、他人や親しい人から自分が悪人だとは思いたくない。できるだけ、 「いい人」でありたいと 思うものである。思いがけず、人から「いい人」という風に判断されるとうれし いし、「悪い人」・「冷たい人」などと思われると悲しいものだ。 時として、無理をしてでも、「いい人」でありたい。人から「いい人」という 烙印を押されたい。と思う時もある。しかし、その「いい人」とは「都合のいい人」なのかもしれない。 今回はこんなエピソードについて紹介したい。 電車に乗りながら今日もJavaをたたく。文字通りラップトップとしてモバイルマシンを広げ、 (ラップトップとは膝の上ということ。ノートPCのことをラップトップという) Javaプログラムのデバックと打ち込みを繰り返す。 電車はバイクと違い自分が運転しなくていいので、移動している時間を自分のしたいことに使える。 大衆に埋没して自己に没頭するのに都合の良い時間だ。 ついつい熱中し、あたりを見回すと、乗り換えの駅に着いていた。スタンバイボタンを押し、ラップトップコンピュータの 画面を閉じて、荷物をまとめ、ホームにでる。 列車のドアが閉まる寸前に脱出することが出来た。よかったよかった。 下手をして、電車から出る前にドアが閉まってしまうと、その後に、 「実はこの駅で降りるんじゃなくて、このドアの近くの広告を見ようとしただけなんだよー」 という雰囲気を醸(かも)しだし、周囲の人間に対して「自分が気付くのが遅くて電車から脱出し損ねた」という事実を 隠蔽する苦労をせずに済んだ。ふー。(*´▽`*) (隠蔽しようと取りつくろっても、そんな哀れな男の行動は回りの人間に1秒でばれざるを得ないが・・) っとりあえず、脱出した。電車は何事もなかったかのようにホームから離れていく。 「乗り換えの階段はどっちかな?」とあたりをきょろきょろ見回すと・・・・ 一人の女性が近寄って来て、話しかけられた!! 女性:「あのぅ。すいません。」 突然、女性から声を掛けられれば、何となく、ドキドキするもの。パッと見、20歳くらいだろうか? 何か質問をする様子だ。ここは紳士的に答えよう! 小生:「なにか?」 女性:「この駅で降りたらコンビニありますか?」 えーっと。以前この駅で降りた時は改札の回りがあんな感じで・・どこか近くにあったかなぁー。 っと最初は真面目に考えた。しかし、よく考えると疑問が浮かんでくる。 ● 都内の駅の周辺でコンビニエンスストアが無いところなんて あるのだろうか? ● まして、コンビニエンスストアを探すくらいならホームのキヨスクで用が足りるのでは? ● コンビニエンスストアが近くにあったら、この駅でこの人は降りるのか? なんて、あやしい質問なんだ! まさか? この俺を試しているのか? 近くにカメラスタッフがいて、反応を伺っているのではないか? 私は不可解に思い、女性に聞き直した。 小生:「コンビニは、探せば当然あると思うけど、この駅のコンビニじゃないと打目なの?」 すると、女性は語り出した。 女性:「昨日から何も食べて無くて、もう、お腹減っちゃって動けないんです。」 女性:「今朝コンビニでこれを食べてから何も食べてないんです。」 といって汚いコンビニのビニール手提げ袋を私に見せた。その中にはサンドイッチの梱包ビニールらしきものと おにぎりの包みのようなものが入っていた。 女性の矛盾たっぷりの上記の言葉を聞いて突っ込みを入れたくなったが、女性は更に話を続けた。 女性:「お金が無くて、お腹減っちゃって、家にもお金がないんです。」 女性:「昨日から何も食べて無くて・・もうホントお腹減っちゃって、減っちゃって。」 しょうがないなーなんか買ってあげようかな。と近くのキヨスクを探す。 ふと、ここで我に返って、冷静にこの女を観察すると・・・ ちょっと太っている。 いや、かなり太っている。 どこから首だか分からないほどあごがタプタプしている。 とても、慢性的にお腹を空かしているかわいそうな人には見えない。 こいつは、どう見ても家出少女だろう。家出したけれど金が切れて、 優しい「足長おじさん」を探しているだけのようだ。 しかも、よく見ると、そうとうかわいくない。 ちィッ!!俺もヤキが回ったもんだぜ!! この女にほんの一瞬でも、何か買ってあげようかな。と思った自分を責めた。 (そのことよりも、「しかも」の方で自分を責めた。) この女、なかなか「食べ物をください。」とは言わない。さんざん、何か買ってよという雰囲気を醸し出しているくせに プライドは捨てていない。 大したものよ。将来は大物になるな。と一方で感心した。 ホームにはもう、私とその女しかいなくなっていた。 1日何か食べない程度の空腹で「この人なら何か買ってくれるかも・・」と思って声を掛けるような家出少女に いかにして渇!を入れるかが、私の命題となっていた。 小生:「お金がなかったら働くとか、親がいるんだったら実家に帰って育ててもらうとかした方がいいんじゃない? だいたい、電車に乗るお金でパンでも買えば良かったのにね。」 私が優しくそういい、立ち去ろうとすると、 女:「今、一人暮らししていて、実家は岩手で、親とは仲が良くなくて。この電車の切符も、 優しい人に買ってもらったんです。グチグチ・・・」 はぁ? 甘ったれを更に甘やかす人が「優しい人」なのか? まあ、あなたにとって「都合の良い人」ではあるがな。 今まで、少しでもお腹が空けば、食事やスナック菓子が出てきたような生活をしていたということが明白な体型のくせして、 たった1日弱、食べ物が無いからといって他人におねだりするような甘ったれのクソガキは、グチグチと語り続けていた。 ここは、心を鬼にして私なりの「優しさ」で接っしよう。いや、接しなければならない。 私は決意を固めた。 「3日くらい何も食わなくても大丈夫だ。かえって食べ物と親の有り難みが分かっていいだろう。 しかも、ちょうどいいダイエットになるはずだ!!」 私はザクッと切り捨てた。 「切り捨て御免」 心の中でそうつぶやき、その場を後に乗り換え階段へ向かった。 翌日。いつものように新聞を見ると、なんと一面に 「○○駅ホームで女性の餓死死体! 平成の世に貧富の差拡大!」という見出し! まさか!と思って写真を見ると「あの時の女だ!」 嗚呼!あの時、心を鬼にせずにスニッカーズでも買ってあげれば、こんなことにはならずに済んだのか!! しかも、記事を読み進めると、 ==遺書と思われる紙切れがポケットの中に入っており、そこには 「最後の力を振り絞って食べ物を恵んでもらうために男の人に声を掛けたが、その男に精神的虐待を受け、その時点で生きる気力を無くしました。」 と書かれており、現在警察ではその男が、女性の死と何らかの関係があるものと見て行方を追っています。== と書いてある!! ガッデム!! なんてことを想像(0.3秒)してみたりしてああやっぱり何か買ってあげれば良かったかなぁ などと弱気にもなったりしながら、階段を下りていると、 なぜかその女は私に付いてきているではないか!! あれだけ切り捨てたのに。まだついてくるか?切り捨て方が甘かったか?と反省してみる。 そして、まだ、自分の甘ったれた身の上を、突っ込みどころ満載の矛盾を含みながら話している。 それから、2・3会話を交わし・・・ 女:「ところで、今、改札に向かってるんですよね?」 小生:「ここは乗り換え専用の通路だから、改札は今来たところをずっと戻ってホームに出て反対側の階段だよ。」 ひょっとして、この女。 私が、改札を出てコンビニまで案内し、そこで何かを買ってあげるのだと、今の今まで思っていたのか? 強い!強すぎる!この女!近い将来大物になるやもしれん! しかも、まだ付いてくる!? とうとう、私はこの女にとどめを刺すことは出来ませんでした。(・_・、) |